
私が住む滋賀県は、山々で囲まれている地形から近江盆地と言われています。その真ん中に周囲約235Km,県の面積約4018平方キロメートルの六分の一を占める琵琶湖があります。この琵琶湖からの贈り物として鮒ずしがあります。鮒をご飯といっしょ漬け込み、自然醗酵により、生じた乳酸の酸味で腐敗を防いだ貯蔵食品です。
鮒ずしや 彦根の城に 雲かかる (俳人蕪村の句です) 鮒ずしは、県内の大津、高島,長浜等、琵琶湖周辺の地で作っていますが,彦根地方は発祥地として特に有名です。安土から稲枝の湖岸では、4月頃になると、ヨシの繁ったところへ産卵のために鮒が寄ってきます。頭も小さく最も美味しいと言われています。
「鮒ずしの来た道」(すしの本:柴田書店)では、すしといって、私たちが普通に思い浮かべる握り寿司は、江戸時代に出来あがったものであり,すし発祥の地は東南アジアの山岳地といわれています。東アジアでは、米と魚介類、米と豆を組み合わせた食品が多く、なれずしは、水田農耕民族が、季節の川魚を貯蔵するために作りはじめたと考えられ、今でもミャンマーやタイ、ボルネオなどの山岳地帯では、昔ながらの方法でなれずしが漬けられています。食品の保存方法としては、塩漬けや、乾燥などが 考えられますが,海の遠い地域では塩は貴重品であり、乾燥も雨の多い土地では難しいので最小限の塩で保存した後、穀物に漬け込むという方法が考え出されたのでしょう。
日本に何時どんな形で、すしが伝わたかは不明とされていますが、寿司の権威者、篠田統 氏は「日本のすしは、悠久の昔に大陸からイネが渡米したとき、それと一緒に伝わった魚類加古法の一つではないかと述べています。鮒ずしの漬け方の基本は、塩切りと飯漬けですが、出来あがった鮒ずしの味や匂いには微妙な違いがあります。塩加減、飯の量、水の張り方、桶の置く場所や空気の流通の具合発酵過程での温度など、様々な条件の違いが味や匂いに反映するものです。店独自の味を作り出すために、手水に酒の代わりに焼酎を使ったり、サンショウの実や、みりん、麹を入れたりしてそれぞれの店が、先代からの言い伝えを堅く守りながらも、鮒ずしの漬け方について工夫しています。
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